ごあいさつ

東京警察病院脳神経外科部長の吉野 正紀(よしの まさのり)と申します。脳神経外科の手術治療を安全に行うためには、正確な手術手技はもちろんのこと、正確な病態把握に基づく適切な治療戦略の構築が重要です。私はこれまで約20年の脳神経外科医生活のなかで、常に脳神経外科治療の安全性と確実性向上に主眼を置き研鑽して参りました。具体的には、これまで多くの名手と言われる先生方にご指導をいただき手術手技の研鑽を積み、また大学院時には、3次元コンピュータグラフィックスを用いた手術シミュレーションの研究に従事し、いかにして正確な病態把握に基づく適切な治療戦略を構築するかということを研究して参りました。3次元コンピュータグラフィックスを用いた手術シミュレーションといっても、あまり聞きなれない方も多いかと思いますが、これは患者さんの術前検査で行なったMRIやCTの画像から、病巣を中心とした3次元コンピュータグラフィックスを作成し、作成した3次元画像を用いて手術シミュレーションを行うもので、手術の安全性向上に大きく貢献するものです。

ここで一例シミュレーションが大変有用であった具体例を提示します。この患者さんは脳動静脈奇形という動脈と静脈が直接つながってしまう病気の方です。動脈と静脈が直接つながることで、静脈に負担がかかり血管が破れて出血してしまったため、病変を摘出することになりました。術前の脳血管撮影検査では、細かな血管がたくさん集まっていることはわかるものの、血管1本1本を見分けることが難しく、どの血管が病変に到達しどの血管が正常な脳へ到達するかを見分けることが非常に難しい状況でした。手術中に不用意に正常な脳を栄養する血管を損傷すると、脳への血流が途絶えてしまい脳梗塞になってしまいます。

そこで先述の3次元コンピュータグラフィックスを作成して、左の動画のようなシミュレーションを行いました。3次元画像では、複雑な血管を1本ずつ見分けることが可能で、周囲の脳との関係も明瞭に把握することができました。実際の手術シミュレーションもすることが可能であり、安全に病変を摘出することができました。このように3次元画像は複雑な病態把握に非常に有用であります。この3次元画像の有用性については論文でも発表しております(https://doi.org/10.1016/j.wneu.2018.12.217)。このような3次元コンピュータグラフィックスを用いた手術シミュレーションは、従来一部の大学でしか行うことはできませんでしたが、現在東京警察病院では吉野が着任したことによって施行可能となっており、日々の手術治療の術前シミュレーションとして活用しております。本サイトでは、この手術シミュレーション以外にも疾患の知識や治療法等についての情報を掲載しております。本サイトが東京警察病院脳神経外科の診療体制や治療方針、また皆様の病気の御理解の一助になれば幸いです。

経歴と師事した脳神経外科医師

2001年 新潟大学医学部卒業

2001年 東大脳神経外科入局:桐野高明教授

2001年 帝京大学ちば医療センター:長島正教授、松野彰准教授

2002年 富士脳障害研究所附属病院:瀬川弘副院長、河野道宏部長

2005年 NTT関東病院:永田和哉部長

2006年 東大病院:斉藤延人教授

2006年 多摩総合医療センター:水谷徹部長

2011年 東大大学院:斉藤延人教授  3次元コンピュータグラフィックスを用いた手術シミュレーションの研究に従事し医学博士号を取得

2014年 米国ピッツバーグ大学脳神経外科に研究留学:Dr. Juan Carlos Fernandez-Miranda

2015年 虎の門病院脳神経外科医長:原貴行部長

2019年 東京警察病院脳神経外科部長

資格:

医学博士(東京大学)

日本脳神経外科専門認定医・指導医

日本脳卒中学会認定専門医・指導医

日本脳卒中の外科学会技術指導医

専門:

・脳血管障害の手術全般(クリッピング、バイパス、頸動脈内膜剥離等)

・三叉神経痛および顔面けいれんの治療全般

・聴神経腫瘍、髄膜腫等の脳腫瘍の治療全般

・コンピュータグラフィックスの医療への応用

受賞歴:

2006年 東大脳神経外科同門会賞

2015年 関東脳神経外科懇話会年次奨励賞

2021年 第8回手技にこだわる脳神経外科ビデオカンファランス 衝撃演題賞

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