顔面けいれん・三叉神経痛

顔面けいれん

顔面けいれんは顔がピクピク動く病気です。

顔の動きを司る神経を顔面神経といい、顔の知覚を司る神経を三叉神経と言います。
顔面けいれんとは顔面が勝手にピクピクしてしまう病気で、三叉神経痛とは顔面に激しい痛みが出現する病気です。症状は異なるものの両者とも顔面に症状が出現すること、同じような原因で病気が起こること、治療法が似ていることなどよりこれらの病気を一括りにして解説することが多く、本サイトでも両者を同じ項目で解説いたします。

顔面けいれんとは?
「顔面けいれんとは、顔面の筋肉が勝手にピクピクとなる病気です」

顔面けいれんとは、目や口の周囲の筋肉がけいれん(自分の意思とは関係なくピクピクと勝手に動く)を起こす病気です。顔面けいれんは多くは眼周囲のピクつきに始まり、徐々に顔全体に広がります。一つ注意しなければいけないこととして、似たような症状を起こす病気に眼瞼けいれんという病気があります。これは顔面けいれんと異なり、両側の瞼(まぶた)だけにけいれんを起こします。眼瞼けいれんの原因は不明で、顔面けいれんと異なり手術をしても症状は改善しませんので注意が必要です。
顔面けいれんは放っておくと徐々に頻度や持続時間が増加し、一日中けいれんしたり、寝ているときにもけいれんを認めることがあります。この病気は生命に関わるものではありませんが、美容上の問題や対人関係に気を使ったり、自動車の運転など両目をしっかり使わないといけない作業の際に不自由を感じることがあります。また、周囲の人が考えるよりも患者さんの精神的負担は大変なものです。ストレスや疲労によって症状は増悪しやすく、日常生活に支障を来すことによって、うつ症状を併発することもあります。顔面けいれんは自然に治ることはまれで、徐々に進行します。長い間放っておくと、顔面神経が麻痺して顔が歪んでしまうことがあります。

顔面けいれんの原因
「顔面けいれんは、脳の特定の部位で神経が血管に圧迫されることによって発症します」

顔面けいれんの原因は、顔を動かす神経である顔面神経の根元が血管によって圧迫されることによって起こります。顔面神経は脳幹から出ていますが、この部分の顔面神経は特に圧迫に弱いとされており、血管が当たっていると顔面神経が障害されて常に興奮状態となりけいれんを引き起こすのです。脳幹から顔面神経が出ている部位の近くには正常の方でもたくさんの血管が走行していますが、それらの血管がたまたま神経に当たっていると顔面けいれんという症状が起きてしまうのです(右図)。

顔面けいれんの治療
「顔面けいれんには以下の治療法があります」

1. 経過観察
発症初期や症状が軽度である場合、もしくは患者さんが治療を希望されない場合は特に治療をせず経過観察することがあります。しかしこの場合でも、脳腫瘍など、他の疾患によって顔面けいれんを来している可能性があるので脳のCTやMRIなどの検査を行うことが大切です。日常生活では、寒冷暴露(寒いところにずっといること)を避ける、睡眠不足やストレスを避ける、喫煙や飲酒を控えることなどに注意します。

2. 内服薬による治療
顔面けいれんの薬物療法としては、一部の抗てんかん薬が用いられます。これは顔面神経の圧迫によって生じる顔面神経の異常な興奮状態を抑えようとするものです。投薬によって一時的に改善することはありますが、顔面けいれんを完全に取り除くことはできないため、症状が軽い方や以下に説明するボツリヌス毒素や手術が行えない方に使用されます。

3. ボツリヌス毒素療法
安全性・有効性ともに確立された治療法で、有効率は90%以上といわれています。ボツリヌス毒素製剤を眼輪筋や口輪筋などの顔の筋肉に直接注射します。数日後より効果が現れますが、3ヶ月前後で効き目がきれてしまうことが多く、そのたびに注射を繰り返さなくてはなりません。つまり、ボツリヌス毒素療法は根本的に顔面けいれんを治癒させるものではありません。また副作用として可逆性(元に戻ること)ではありますが、顔面神経麻痺を来すことがあります。

4. 手術(神経血管減圧術)
顔面けいれんの唯一の根治療法(原因を取り除いて根本的に治すこと)は手術です。手術は、顔面神経を圧迫している血管を移動させることによって神経への圧迫を解除するもので、「神経血管減圧術」、「微小血管減圧術」、「ジャネッタの手術」と呼ばれます。手術によって9割の人は顔面けいれんが消失します。手術は、まず耳の後ろ、髪の毛の生えている皮膚を切開します。頭蓋骨に穴を開けます。手術顕微鏡を用いて脳の深部を観察し、顔面神経の根元を圧迫している血管(責任血管)を探します。責任血管を慎重に移動させて周囲の骨や硬膜という組織に貼付けます(左図)。手術時間は数時間です。

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