顔面けいれん・三叉神経痛

東京警察病院における診断・治療

当科における顔面けいれん、三叉神経痛にたいする治療方法についてご紹介いたします。

三叉神経痛や顔面けいれんの多くの患者さんは、詳細な問診や診察、適切な画像検査を用いれば診断に困ることはあまりありません。また手術法もほぼ確立されていますので、多くの方は手術で後遺症がでることもなく症状が改善するものと思われます。しかしながら、なかには診断や手術がひとすじなわではいかないケースがあります。何よりも患者さんにとっては、自分が簡単なケースであろうが難しいケースであろうが、常に最善で安全確実な医療を受けることを希望されていると思います。
そのような考えから、当科では下記で説明している最新の診断・手術支援を例外なく全ての患者さんにおこなっております

画像診断について
「東京警察病院脳神経外科では最新のMRIを駆使して高精度な診断をおこなっています」

三叉神経痛や顔面けいれんの原因検索においては、まず頭部MRIにて神経を圧迫する血管もしくは腫瘍がないかを調べます。近年のMRIの発達により、脳神経を詳細に把握することができるようになりましたが、通常の脳神経の撮影では、どれが脳神経でどれが血管かを把握することが難しい場合があります。当科では脳神経が見える画像と血管が見える画像を融合させることで、どれが神経でどれが血管かをわかりやすく把握可能な工夫をしております。具体例を提示します(左図)。左図の左側のMRI画像は神経をわかりやすくするために一般的に行われている方法で撮影した画像ですが、神経がよくわかるものの神経と血管が同じ色調のため、どれが神経で血管かを区別することが難しい場合があります。そこで左図の右側画像のように神経がよく見える画像に血管が写っている画像を重ね合わせ、血管に色をつけてあげることで神経と血管を色合いで区別することが可能になります。こうすることで神経を圧迫する血管や腫瘍を同定し、本疾患の診断や治療効果の確実性の向上に役立てています。

当院での治療の流れ
「当院では、患者さんの状況に応じて最適な治療を提供できるように務めています。」

顔面けいれんや三叉神経痛はあくまで機能的な疾患であり、いわゆる癌などの悪性疾患とは異なるため、病気の診断後直ちに侵襲的な検査、治療が必要になるわけではありません。具体的には、顔面けいれんや三叉神経痛が、どの程度日常生活に影響を及ぼしているかによって治療方針を検討する必要があります。症状が軽度で、それほど日常生活に支障をきたしていない場合は、経過観察か内服加療から開始していきます。顔面けいれんの患者さんで症状が強くなってきた場合は、患者さんのご希望に応じてボツリヌス毒素療法もしくは手術をお勧めしています。一方で三叉神経痛の患者さんでは、内服加療で痛みのコントロールができなくなってしまうと、食事がとれなくなったしまったり、会話ができなくなってしまい日常生活に大きな影響を及ぼすため、全身麻酔が可能な方には積極的に手術をお勧めしています。年齢や体調などによって全身麻酔が困難な方には三叉神経ブロックをお勧めしています。
いずれに疾患においても発症早期から根治的治療を希望される患者さんには、積極的に手術療法をお勧めしています。

当院における手術
「当院では最先端の手術シミュレーションシステムと手術支援システムで安全で確実な手術をおこなっています」

正常な方でも顔面神経や三叉神経の周囲には血管がたくさん走行しているため、圧迫の原因となっている血管(責任血管といいます)を術前から予測することは非常に重要です。もし責任血管でない血管を手術でいじってしまうと合併症が出現する可能性がありますし、そもそも責任血管以外の血管を移動しても症状は消失しません。当院では最新のMRI装置を用いて術前検査を行いますが、更に最先端のコンピューターグラフィックス技術を用いてCTやMRI検査の画像データから3次元画像を作成し、診断や手術シミュレーションを行っています(左図、下図)。この3次元画像の作成には、手術前の通常の検査で行うCTとMRIの検査データを用いて処理しますので、患者さんの更なる負担はありません。

また当科では、脳神経の機能を術中に把握する電気生理学的モニタリングという検査を手術操作と平行して行っております。ひとつは聴性脳幹反応検査といいますが、これは三叉神経・顔面神経のすぐ近くを走行している聴神経や脳幹(生命維持中枢ともいうべき非常に大切な脳組織)の障害を鋭敏に検知するものです。神経に障害が加わると検査の反応が鈍くなりますので、検査の反応が鈍くならないように注意して手術を行うことで神経を損傷せずに手術を行うことが可能となります。特に手術による聴力障害の予防に有用です。また顔面けいれんの手術では顔面筋の異常筋反応検査も行います。顔面けいれんでは、顔の皮膚を走行している顔面神経のある部分を電気刺激すると、通常ではみられない他の部位の顔面筋から反応を認めます。この反応は手術中に顔面神経の圧迫が解除されると速やかに消失しますので、手術の最中に圧迫が解除されたかどうかがリアルタイムで分かります。これらの電気生理学的モニタリングによって神経血管減圧術の成功率と合併症の回避率は飛躍的に高まりました。

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