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顔面けいれん・三叉神経痛
三叉神経痛
三叉神経痛とは顔面に電撃痛がはしる病気です。
顔の動きを司る神経を顔面神経といい、顔の知覚を司る神経を三叉神経と言います。
顔面けいれんとは顔面が勝手にピクピクしてしまう病気で、三叉神経痛とは顔面に激しい痛みが出現する病気です。症状は異なるものの両者とも顔面に症状が出現すること、同じような原因で病気が起こること、治療法が似ていることなどよりこれらの病気を一括りにして解説することが多く、本サイトでも両者を同じ項目で解説いたします。
三叉神経痛とは?
「三叉神経痛とは、顔面に電撃痛がはしる病気です」
三叉神経痛とは、顔面の知覚を司る神経である三叉神経の支配領域(すなわち顔面)に痛みが出現する病気です。三叉神経痛の痛みの性質は特徴的で、普段は痛みを感じることはありませんが、洗顔、ひげそり、歯磨き、化粧、物を食べる動作、風にあたったときなど顔の運動や顔に何かが触れることがきっかけで痛みが起こります。痛みの程度は非常に強く刺すような痛みで「電撃痛」とも言われますが、痛みは瞬間的であることが多く、ほとんどが数秒間です。季節や天候によって痛みが変動することも特徴で、11月や2月に痛みが強くなる方がしばしばいらっしゃいます。虫歯による痛みと間違えられて歯の治療をされることもあります。病気そのものはほうっておいても命にかかわるものではありませんが、自然に治ることは極めてまれです。痛みのために洗顔や化粧など日常生活がひどく制限され、時には話をするのも嫌になったり、痛みが出る動作を避けようとしてしかめ面になったりします。また、痛みのために食事ができず低栄養になったり、痛みが辛くてうつ症状を認めることもあります。
三叉神経痛の原因
「三叉神経痛は、脳の特定の部位で神経が血管に圧迫されることによって発症します」
三叉神経は顔の知覚情報を大脳へ伝達する神経です。顔面痙攣と同様に、三叉神経は脳幹を出てから、頭蓋骨の中を通って顔面に広がります。三叉神経が、脳幹から頭蓋骨に入る間に血管によって押されることで顔面の痛みが引き起こされます。神経を圧迫するものはほとんどが血管ですが、稀に腫瘍による圧迫もあるためMRI検査が必要です(右図)。右図は聴神経腫瘍が三叉神経を圧迫することで三叉神経痛を発症した一例です。手術で腫瘍を摘出して三叉神経の圧迫を改善し、三叉神経痛の治療を行いました。
三叉神経痛の治療
「一般的な三叉神経痛の治療について説明します」
1. 内服薬による治療
三叉神経痛にはカルバマゼピン(商品名:テグレトール)という薬が大変効果的で、これによって80%以上の方は痛みが改善するか消失します。カルバマゼピンの副作用として、服薬開始当初はふらつき、めまい、眠気、吐き気などを認めることがありますが、これらは内服を続けているうちに慣れていきます(約1週間程度)。また、薬によって肝臓の機能が障害されたり、皮膚に発疹が出現することもあります。
三叉神経痛に良く効くカルバマゼピン¬ですが、長期間服用していると徐々に効果が薄れることが多く、それに伴い薬の量が増えていきます。薬の量が増えることによって副作用の問題が出てきたり、薬を増やしても効果が不十分である場合には、手術による根治的な加療を検討します。
2. 三叉神経ブロック
麻酔薬や神経破壊薬を顔の皮膚から注射して痛みを取る方法です。効果は一時的であり、顔にしびれたような感覚が残ることがあります。
3. 放射線療法
ガンマナイフという特殊な放射線療法によって、病変部を治療する方法です。新しい治療方法で、治療効果に関しては一定の見解が得られていませんが、痛みが再発したり顔にしびれたような感覚が残ることもあり、最初に選択すべき治療法でないと考えられています。
4. 手術(神経血管減圧術)
三叉神経痛の唯一の根治療法(原因を取り除いて根本的に治すこと)は手術です。
手術は、三叉神経を圧迫している血管を移動させることによって神経への圧迫を解除するもので、「神経血管減圧術」、「微小血管減圧術」、「ジャネッタの手術」などと呼ばれます。
手術によって9割の人が痛みから開放され、術後はカルバマゼピンの内服も不要になるといわれています。手術は、まず耳の後ろ、髪の毛の生えている皮膚を切開します。頭蓋骨に穴を開けます。手術顕微鏡を用いて脳の深部を観察し、三叉神経の根元を圧迫している血管(責任血管)を探します。責任血管を慎重に移動させて周囲の骨や硬膜という組織に貼付けます(左図)。手術時間は数時間です。