脳卒中

脳梗塞とは?

脳梗塞は脳の血管が詰まって神経細胞が死んでしまう病気です。

ここでは脳梗塞について解説します。脳梗塞は以下に説明するようにいくつかのタイプに分かれます。
それぞれのタイプによって治療方法や再発予防の方法が異なりますので、それらについて解説していきます。

脳梗塞とは?
「脳梗塞は脳の血管が詰まって神経細胞が死んでしまう病気です」

脳梗塞は詰まった血管の大きさや、詰まり方によって大きく以下の3タイプに分けられます(左図)。
① ラクナ梗塞:
ラクナとは小さな空洞を意味するラテン語に由来します。高血圧が脳の細い血管に負担をかけることで血管が変性し、最終的に血管が詰まることで生じる直径15mm以下の小さな脳梗塞のことを指します。半身麻痺や痺れなどが起こりますが、言語障害なでの重大な障害は少なく、脳梗塞のなかでは比較的軽症のことが多いタイプです。
② アテローム血栓性脳梗塞:
頭や首の太い血管の内側にコレステロールなどの脂肪からなる物質がたまって血管が細くなることで血流が不足したり、たまっている物質が剥がれたりして発症します。半身麻痺や痺れだけではなく、言語障害といった重大な障害を生じることがあります。多くは高血圧、糖尿病、高脂血症なでの生活習慣病が原因です。
③ 心原性脳塞栓症:
心房細動などで血液が心臓内で淀むと、心臓内で血液のかたまりができて脳の動脈に流れて、脳の血管が詰まることで起こります。太い血管が詰まることが多いため、重症になることが多いタイプです。
なぜこの様に細かく分類するかというと、それぞれのタイプで治療法や予防方法が異なるからです。

脳梗塞急性期の治療について
「早期に治療をすることで予後を改善できることがあります」

脳梗塞の治療は発症してからすぐに行う治療(急性期治療)とある程度時間が経過してからの再発予防の治療(慢性期治療)に分けて考える必要があります。急性期の治療に関しては、以前は進行を予防する程度の治療しかできませんでしたが、近年の医学の発達によってアルテプラーゼといった薬剤による血栓溶解療法と血管内治療による血栓回収療法が可能となりました。前者は発症から4.5時間以内で、出血傾向などの禁忌事項にあたらなければ施行可能です。後者は発症から6時間以内にアルテプラーゼを含む内科的治療に追加して施行することが推奨されております。また発症から6時間を超えた患者さんでも、病状によっては16時間以内に血栓溶解療法を行うことが勧められており、さらに発症から16~24時間の患者さんでも病状によっては血栓溶解療法を行うことが妥当とされております(脳卒中ガイドライン2021より)。いずれの治療も血管の詰まりをなおして脳梗塞になることを防ぐことを目的とします。発症から治療開始の時間が早いほど良好な結果となることがわかっておりますが、出血性の合併症のリスクが高いと見込まれる場合は施行できないこともあります。個別の状態に応じて判断をする必要があるため、詳細は担当医にお聞きください。
東京警察病院脳卒中センターでは24時間365日アルテプラーゼによる血栓溶解療法と血管内治療による血栓回収療法が可能です。

すぐに受診すべき脳梗塞の症状とは?
「発症から治療開始、再開通までの時間が予後と関連します」

血栓溶解療法や血栓回収療法においては、発症から治療開始、再開通までの時間が予後と関連すると報告されています。治療開始までの時間を短縮するためには、病院到着から治療開始までの時間を短縮することはもちろんのことですが(こちらは医療者側の努力で短縮可能です)、発症から病院到着までの時間も短縮する必要があります。発症から病院到着までの時間を短縮するためには、患者本人や家族が「脳卒中に気づくこと」が重要です。では脳梗塞の症状はどのようなものがあるのでしょうか?左図は脳梗塞で出現する代表的な症状です。このような症状は一つだけ出現することもあれば、いつくかの症状が重複して出現することもあります。またよく言われるように、右の脳は左手足を支配して、左の脳は右の手足を支配しますので、症状は「体の半分だけ」に出現することが一般的です。左図に示したように手足や顔の麻痺や痺れ、呂律困難などが出現した際には脳梗塞が疑われますので、一刻も早く当院を含めた専門医療機関を受診する必要があります。

脳梗塞慢性期の治療(再発予防)について
「再発予防は各病態に基づいて内科的治療と外科的治療を行います」

慢性期の治療の目的は、脳梗塞の再発予防です。脳梗塞の再発を予防するためには、脳梗塞に至った原因を突き止めて(病態の把握)対処をする必要がありますが、いずれの病態においても高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック症候群等の生活習慣病の管理・治療は重要です。
先ほど説明した脳梗塞の3タイプのうちどのタイプに当てはまるかが判明したら、生活習慣病の治療に加え、それぞれのタイプに最適な再発予防の治療を行います。再発予防の治療方法には大きく分けて薬による内科的治療方法と、手術による外科的治療方法があります。外科的治療は、内科的治療のみでは再発予防の効果が十分ではない時に行われるものです。以下でそれぞれの病態に応じた再発予防の方法を説明します。
① ラクナ梗塞:
ラクナ梗塞は高血圧が脳の細い血管に負担をかけることで血管が変性し、最終的に血管が詰まることで発症しますが、この血管変性は血管が詰まるだけではなく血管を破る(すなわち脳出血)ことにも関与していることが判明してきました。そのため再発予防には、アテローム血栓性脳梗塞と同様に抗血小板薬(血液サラサラ)を使用しますが、抗血小板薬の投与によって脳出血のリスクを助長する可能性がありますので、出血合併症の少ない抗血小板薬の選択(具体的にはシロスタゾールを使用することが多い)と血圧の管理が重要となります。このタイプの脳梗塞では、再発予防は薬によるものが主体であり、手術を必要とすることはありません。
② アテローム血栓性脳梗塞:
頭や首の太い血管の内側にコレステロールなどの脂肪からなる物質がたまって細くなると血栓ができやすくなります。この血栓が脳梗塞の原因になります。したがって再発予防では血栓ができにくくする必要があります。この血栓は動脈内でまず血小板という血液成分が凝集することによってできるため、この血小板の凝集を抑える抗血小板薬(いわゆる血液サラサラの薬:アスピリン、クロピドグレル、シロスタゾール等)を投与することで脳梗塞の再発を予防します。多くの方は内科的治療のみで再発を予防できますが、動脈硬化による血管の狭窄(細いこと)が高度な場合や、血管が閉塞(詰まってしまうこと)している場合には、薬のみでは再発予防効果が十分ではなく外科的治療(頸動脈狭窄部に対する内膜剥離術やステント留置術、バイパス術など)が必要になる場合があります。手術治療の詳細に関しては別項で説明します。
③ 心原性脳塞栓症:
心臓内でつくられた血栓が脳の動脈に流れて脳の血管を詰めることで脳梗塞が起きるので、心臓内で血栓がつくられないようにすることで脳梗塞を予防します。心臓内で作られる血栓は、アテローム血栓性脳梗塞のような動脈硬化の際にできる血栓とは異なりフィブリンという物質の働きが主体となるため、これを抑制する抗凝固薬(抗血小板薬とは異なる血液サラサラの薬:ワルファリン、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン等)が必要となります。

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