脳卒中

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症とは?

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症とは、頭蓋内の太い動脈が細くなったり、詰まってしまう疾患です。

ここでは頭蓋内の血管が細くなったり、詰まったりすることで生じる病気について解説します。

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症とは、頭蓋内の太い動脈が動脈硬化などにより細くなったり、詰まったりする疾患です。動脈硬化が進行すると、血管壁にコレステロールなどの脂肪からなるドロドロした粥状物質がたまり、次第に厚くなってくることで血管が細くなり最終的には詰まってしまいます(左図)。血管が細くなったり詰まったりすると血流が低下して脳梗塞になる危険性があります。さらに、細くなった血管に付着した血栓(血液の塊)や、動脈硬化をきたした血管壁の一部が剥がれることでも脳梗塞になる危険性があります(いわゆるアテローム血栓性脳梗塞です。脳梗塞の解説をご覧ください。)。一方で、血管に狭窄・閉塞を認めても脳梗塞等を発症しない場合もあるので、病態をよく把握して治療方針を検討する必要があります。

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症の治療
「頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症の治療には経過観察、内科的治療、外科的治療があります」

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症が原因で脳梗塞や一過性脳虚血発作などの症状をきたしたものを症候性といい、狭窄による症状を認めないものを無症候性といいます。頚動脈狭窄症と同様に症候性か無症候性かで治療の方針が変わってきます。
症候性頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症を放置した場合、既に脳梗塞を発症してしまった方は脳梗塞の再発をきたす危険性があるため治療が必要です。一般的には血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)の内服が勧められます。また動脈硬化が進行しないように高血圧、脂質異常症、糖尿病をお持ちの方は、それらの治療をしっかりとしていただくことをお勧めします。ただし、血管の狭窄が高度もしくは血管が閉塞しており、かつ脳の血流が著しく低下している場合には薬による治療だけでは脳梗塞予防の効果が十分ではないため、これらの治療に加え手術(バイパス術)が勧められます。手術に関しては、別項でご説明いたします。
無症候性頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症の場合も、動脈硬化のリスクファクターの管理(高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙)が勧められます。無症候性の場合、多くの方は必ずしも血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服する必要はなく、MRI等を定期的に行って経過をみていきますが、他に心臓や血管系に病気があり脳梗塞発症のリスクが高いと思われる場合には必要に応じて抗血小板薬で脳梗塞の予防をする必要があります。しかし症候性と異なり無症候性の場合、手術(バイパス術やステントを用いた血管形成術)による脳梗塞予防の効果がはっきりしないため、一般的に手術は勧められていません。

頭蓋内主幹動脈狭窄・閉塞症の手術治療(バイパス術)
「バイパス術を行なった一例を提示します」

提示画像は左中大脳動脈閉塞による血流不足で脳梗塞をきたした症例です(左図①)。脳梗塞は幸いそれほど大きくなかったため軽度の言語障害のみで回復されましたが、左中大脳動脈領域の血流が著明に低下していたため脳梗塞再発予防目的にバイパス術を行いました。
手術はまず全身麻酔下にあおむけに寝てもらい、頭部を動かないように固定します。その後、耳の前から額の正中部に至る(一部浅側頭動脈に沿って)皮膚切開をおき、皮膚を裏返す形で前へ移動させます。皮膚切開は基本的に髪の毛の生えている部分の中に入るようにします。筋肉を切開し頭蓋骨に到達したのち、特殊な道具で頭蓋骨に小さい窓を作成します(開頭といいます)。脳を覆っている膜(硬膜)を切開すると脳の表面が見えてきます。ここから先は手術顕微鏡を用いての手術となりますが、脳の表面に認められる中大脳動脈のうち、吻合(血管同士を縫い合わせること)に適した血管を2本選択します。これと皮膚の裏から剥がした浅側頭動脈を吻合します。吻合が終了したら中大脳動脈および浅側頭動脈の血流を再開し、バイパス完成です。
術後のMRI検査ではバイパス血管からの血流が確認できます(左図の②では①と比べ、赤丸の部分に頭蓋外から頭蓋内への血流が確認できます)。術後は適宜CT、MRI、脳血流の検査を行います。手術後はどうしても頭皮の血流が悪くなってしまうため、一般的には2週間程度で抜糸を行い退院の日程を検討します。本患者さんも術後特に大きな問題を認めず退院され、その後も脳梗塞の再発を認めずお元気に外来通院されております。

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